【往還集132】23 坂爪真吾『男子の貞操』(ちくま新書)

「貞操」とは今時なんと古風な、と思いながらも読み進めていったのだが、この人の性状況とりわけ男性のそれに関する感度には、あちこちで「なるほど、なるほど」と共鳴した。
男性は自分の性を語るに、自分の身体感覚を通して、自分のことばで語る語彙も文化も持っていない、「それゆえに、女性の身体の評価や採点、支配や売買を通して、間接的に自らの性を語ることしかできない」という指摘、その通りなのだ。
女性の人格・感情を含めずに記号的快楽のみを追いかけることは、女性をモノ扱いすることにつながるというのも、まさしく男性側の弱点だ。
「あとがき」では、セックスの世界を記号に支配された薄っぺらい二次元でなく、相手の人格・感情の奥行きを持つ三次元、そして歴史・文化も含めた四次元の時間軸を導入すべきだと語る。
これは異性問題だけに限定されない、人間観そのものへ通じる問いかけだ。

(2015年2月11日)