私にとって全くはじめての歌人なので、どういうことになるか不安だったが、開くにつれてある不可思議さに魅せられていった。
「背負ってる子が小さくてそう見えるとかじゃなく浮いてるランドセル」
「(屋上の)(鍵)(ください)の手話は(鍵)のとき一瞬怖い顔になる」
「由来は、ときいてもすぐにはこたえてくれずにカップをおいて「蛍が、」
「美大卒を意識するのは履歴書を書くときくらいだよ しょっちゅうだね」
この人は、ほとんどの人が見逃してしまうほんのちいさなあるかなきかの機微に否応なく感応して、そこを歌にしている。
「由来は」では、自分が相手に質問する、相手は聞いているのかいないのか蛍のほうにだけ関心を向けて、蛍が、という。
この淡い人間関係は、作者の立ち合っている周辺、もっと大きくいえば、この全世界への関係意識でもあるにちがいない。
(2015年2月10日)