【往還集132】17 閖上にて

雪の日々も一段落した今日、荒浜から閖上へと巡る。
被災のままの家屋はまだ散在しているものの、あらかた整地されてかさ上げ工事が進んでいる。
4年経過しようとして、やっとここまできた。
3・11の直後、散乱する家財の整理、食品の買出しに追われ、9日後の叔父の死去に翻弄され、身動きならぬ日々を送っていた。ガソリンがやっと手に入り、閖上に立ったのは4月5日のこと。
東部道路を越えると全ては一変した。家屋のことごとくは解体し、大型ガソリン車もころがったまま。
それは現実と非現実の境界の壊滅した風景だった。
以来4年経過しようとして、痕跡をのこすのはわずかになり、新しい慰霊碑も建っている。
けれど、あの日に、倫理とか哲学といわれるものの全てが解体してしまったという感覚は、今になっても消えない。いくらことばを使っても、深奥に届かないという無力感も、消えることがない。
(2015年2月2日)