【往還集132】15 「永遠」

『海辺の扉』下巻の最終章「光の滝」には、満典がギリシャにのこしてきたエフィーを訪ねる場面がある。
自分の子との初対面でもある。

「何分かあとには、俺は俺の子供と対面する。そう、いまの一瞬に、過去も現在も未来もある┅┅。いまこの一瞬が永遠だ。そういうことだったんだ。いまこの一瞬が、永遠だ。」

この感銘深い場面にきたとき、いつかどこかで「永遠」に通じる作品を読んだことがあると思った。
記憶は薄れている。
43年まえの「読書ノート」をめくっていったら、やっと見つけた。
椎名麟三『美しい女』だ。

「そのとき私は、明日地球がほろぶということがはっきりしていても、今日このように電車に乗っている自分が十分であり、この十分な自分には、何か永遠なるものがある、というおかしな気がしていたのである。」

この両者の「永遠」に共通点があるのかないのか、自信はないがとりあえず書きとめておきたい。
(2015年2月1日)