【往還集132】14 小説

久しぶりに小説を読みたくなって宮本輝『海辺の扉』上、下巻を取り出し、今日読了した。
幼いわが子を過失で死なせ、ギリシャへ渡る宇野満典。
とかく短歌づけの自分の第一印象、「へえ、小説って堂々とウソを書いていいんだ!」
今、短歌の世界では、生きている父親を死んだことにした新人作品をめぐって、虚構論議が活発。だから、堂々たるウソにまず感じ入った。
こんなこと小説にとっては当たりまえで、ウソではなく虚構という。
そして第二印象、「虚構が現実よりも現実らしいではないか!」
いつの間にかその世界に引きずり込まれ、心臓がトカトカしてくるのである。
で、一気に読まず、1日のノルマを決め、動悸をしずめしずめして開いていった。
こういう体験も短歌ではめったに、いやほとんどない。
もっとも、小説すべてがトカトカを起こすわけではない。そこはプロ作家の腕しだい。宮本輝は、さすがだ。
(2015年2月1日)