【往還集132】7 篠弘『日日炎炎』(砂子屋書房)

冬季は朝床で歌集を読むチャンスだ。そのなかから先輩格の2人を取りあげたい。
まず篠弘。彼は1933年生れだから、自分より10歳上。
ということは80歳のラインをもう越えたのだ。
けれど執筆も活動もあいかわらず精力的。篠さんの歌でいつも興味深いのは会議歌(かいぎか)だ。日本文藝家協会の理事長だから会議も多い。そういうとき彼は人間観察をする。

「理事会を終へたる後のパーティは老いばかりにて一人が倒る」

になると、モデルが特定できる。その際どさにこちらもクスッと笑ってしまう。
その他にも古書店の歌、海外詠、震災詠など満載され、まさに「日日炎炎」状態。
けれど今回の歌集で今までになく魅かれたのは、肩が脱力してふっともれ出たような歌。

「さみどりに染まるけやきの下道にひとの坐らぬ石の椅子あり」
「月下美人五つが咲(ひら)きありありと黄の蕊(しべ)見れば秋が添ひくる」

などなど。
(2015年1月13日)