【往還集132】6 夕べの雲

新年を迎えての初仕事は、「短歌往来」1月号から連載をはじめた「歌の遠近術」。
その3回目「性愛歌断想」を書き、さらに「性愛歌断想・続」を継ぎ足して今日落筆した。
断想のつもりが、われながらかなりの本質論となった。
1回の分量は11枚程度とはいえ、何冊かの資料も使ったから、さすがに疲れて目を窓外へ移す。夕5時近いのに冬至以来少しずつ日は長くなり、はっとするほどにあざやかなうすべにの雲が浮かぶ。
自然の営みに反して、世はなんとさまざまな出来事がつづくことか。寛容の空気が圧迫され、ひどくぎすぎすしている。ヘイトスピーチだけではない。沖縄で市長、知事選挙で反自民が勝利したら、見せしめに自民政権は予算を減らすというではないか。
そしてフランスの諷刺画に対する血みどろのテロ事件。

「せめて夕べの雲よ、いつでも寛容であれ」

と、吟遊詩人のように口ずさんでみる。
(2015年1月12日)