古山高麗雄の代表作は「プレオー8の夜明け」。22歳のとき仙台の歩兵第四聯隊に入隊した。そういう機縁があったからだろう、出版社の企画で学校講演に来てもらったことがある。
ところが生徒の大半は文学に関心がない。古山もぼそぼそとしゃべるだけで、要領をえないうちに時間がたってしまった。
自分は最近、戦争文学を集中して読んでいる。その1冊が『二十三の戦争短篇小説』(文芸春秋)。
描かれているのは、勇猛とか悲惨とかいう像とはちがう、いうなればダメ兵士像だ。かの日の要領を得ない講演の姿が思い出されて、懐かしささえ湧いてきた。
なにしろ分隊長の「撃て」の号令でやたらにぶっ放すものの、空へ向けて撃つ(「白い田圃」)。捕虜の手に食いこんでいる縄も、点検するふりをして緩めてやる。
皇軍兵士とはまるでちがう、等身大の兵士像が、つぎつぎに登場する。それがなんだか新鮮でさえあるのだ。
(2014年12月12日)