本年をふり返り、最も感銘を受けた本をあげるならば、朴裕河(パクユハ)『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』(朝日新聞出版)だ。
2006年刊行の『和解のために』もかなりの手応えだったが、今度は慰安婦問題に焦点をしぼり、歴史的経過と韓日の現在に正面から取り組む。
この1冊をまえにすると、「朝日」の誤報道は問題の1部でしかないことが見えてくる。324頁に及ぶ大冊をわずかのスペースで紹介するのは無理なので、慰安婦の根本に関わる1点だけ記しとどめておきたい。
「一人の女性を圧倒的な多数の男性が欲望の〈手段〉としたことは、同じ人間として、恥ずべきことではないだろうか。慰安婦たちが尊厳を回復したいと言っているのはそのためでもある。彼女たちの羞恥の感覚はおそらく、人間ではなく、〈もの〉として扱われた記憶による。」
この1冊があるおかげで、世を絶望せずに越年できそうだ。
(2014年12月28日)