田井安曇(たいあずみ)、本名我妻泰(わがつまとおる)、通称我妻泰(わがつまたい)。
1930年長野県生まれ。11月2日、肺炎で死去、享年84歳。
長く闘病生活していたから覚悟はしていたものの、やはり寂しい。
彼は教師時代、60年安保にまともに遭遇し、組合活動の闘士となる。
その後も思想性を揺るがさず、「綱手」を立ち上げ、同志と砦を守りつづけてきた。
私は『水のほとり』の、
「とどまるというひとつにも弩(いしゆみ)のごとき努力をして過ぎむのみ」
「闇にまぎれて帰りゆくこのよるべなきぼろぼろをわれは詩人と呼ぶ」
「ためらわず朝鮮服の少女来る通りすがいて涙ぐましも」
などが好きだった。
思想性、意志性、抒情性の渾然一体となった瞬間。
その後瑣末リアリズムの歌が多くなったのは、惜しい。
それ以上に「タイアズミ」などという軟弱な筆名にしたのが気に入らず、本人にも伝えた。
彼はどんな弁解もしなかった。
そういう人だった。
また一つの時代が終わる。
(2014年11月9日)