【往還集131】23 虹

大きく出た虹

一夜の雨風が朝になってあがり、大虹が出た。
住んでいる所は山を切り開いた高台にある。北方には泉ヶ岳方面の峰々が連なっているから、時雨の季節になると虹がよく出る。
虹は、いつもふしぎだ。手放しで、人を喜ばせる。「虹、虹だよ」と、どの人にも知らせたくなる。知らされると、縁もゆかりもない人なのに、旧知の間柄の気分になる。
今日は時雨が断続しながらつづいたため、朝に出て昼に出てさらに午後まで出た。寒さはいやだが、ひどく大儲けした気分。
引っ越してきて間もなく、何度も虹を見ているうちに、ふっと疑問が湧いてきた。

「分度器立てたなら倒れてしまうのに、なぜ虹は倒れないのだろうーー」

思案したはての答はつぎのよう。

「虹は真ん丸なのに半分は地中に隠れている。隠れたところは少しもいばったりしない。」

この〈名案〉を歌にしたが、われながら理屈っぽくて、とても秀歌とはいえなかった。
(2014年11月3日)