【往還集131】21 中原浄水場

旧事務所の洋風の建物

仙山線愛子(あやし)駅の北方には、広瀬川が流れる。開成橋を渡り、さらに急坂を上ると、中原浄水場に着く。大正12年に完成し、仙台市内にはじめて水道を送ったのがここ。
とはいっても観光名所でもなんでもない。いつ行っても閑散としていて、ほとんど人の気配はない。
それが気に入って時々行く。
庭園はよく手入れされていて、洒落た感じの洋風建築がある。旧事務所跡。
浄水場からは管を通って水が送られ、3つの小噴水にあふれつづける。
庭園沿いには小道があって、そこを辿って行くと雑木林が広がり、落葉の匂いがしてくる。
さらに奥の方から、時々テニスボールの音もする。
私は旧事務所の玄関に、ぼけーんと腰をおろしているのが好きだ。
夏には日差しを避けて、秋には逆に日差しを浴びて。
時間が停まっている、いや時間が消えて、地球にはじめていのちの生れた日、そこに、もどっている気がしてくる。
(2014年11月2日)