【往還集131】13 わからないということ

あああ、まただめだったか。
「あああ」には、ザンネン、ガッカリ、カワイソウなどの輻輳した思いがこもる。
村上春樹のノーベル文学賞、何度も候補にあがり、今年こそはとマスコミこぞって大騒ぎしたのに、またまたはずれ。何よりも本人がガックリきているだろう。
けれどいま告白(かた)ろうとしているのは、そのことではない。これまで無能をさらすようで公言できないできたが、自分は村上春樹を読んでおもしろいと思ったことが一度もないのだ。こんなに人気があり、大売れに売れているというのに。
さらに無能ぶりを告白(かた)れば、大江健三郎もどこがおもしろいのかわからない。辛うじて手応えを感じたのは小説では「飼育」だけ、そして『ヒロシマノート』をはじめとするエッセイ。
両者ともエッセイならわかる。
世間で偉大な作家と認めているのに、チンプンカンプンなのは、こちらになにか重大な欠陥があるのだ、きっと。
(2014年10月10日)