【往還集131】12 皆既月食

昨夜6時14分に欠けはじめた月は、7時24分に完璧なる月食状態になった。
真っ暗になるのかと思ったらそうではない、おぞましい、それでいて神秘的な赤がね色の円盤になった。
折々ベランダに出て眺めながら、私は小学低学年の日のことを思い出していた。
月食の始終を観察し、記録しようと、あらかじめ用紙に幾つもの丸を書き、2階出窓に坐りこんだ。
やがて欠けはじめる。
そのさまを書き入れ、時刻も添えていく。しだいに夜も更け、眠気に襲われるが、目をこすりこすり、復元するまで観察した。
それを夏休みの自由課題として提出。
ところが一人の同級生、「これ、新聞写したのだべ」という。
当然「ほんとに観察したんだ」と抗議する。が、証拠はない。家に帰って新聞を探したら、確かに月食の推移が掲載されていた。
実際の観察と、模写を区別する方法はあるのか、ないのか。
この問題、まだ解決していない。
(2014年10月9日)