【往還集131】6 日本とアメリカ

加藤典洋『人類が永遠に続くのではないとしたら』(新潮社)を読んでいる。
久しぶりに思想・哲学書の扉を開くと肩が凝る。けれど、微視を疎かにせず、巨視へ挑もうとする熱い気息が伝わっきて、難解ながらも引き込まれていく。
「Ⅲ日本から世界へ」に来たら、なるほどと納得するところがあった。
それは日本とアメリカの関係。「原爆投下こそ、アメリカの権力者たちが、今なお日本を自分の勢力下から手放すことのない究極の理由なのではないか」という仮設を立てる。
原爆投下を謝罪していないアメリカ、赦すといっていない日本。日本はアメリカからの糾弾なしに核攻撃できる権利を保持している唯一の国だ。他方、日本はアジア諸国にしっかり謝罪していない。謝罪できない日本の保守的権力者の逃げ場は、アメリカしかない。 
これが加藤の論理だ。わかるようでわからない日米の関係、それを解く糸口が一気に鮮明になった。
(2014年9月30日)