岩手県水沢は馬の産地。
水沢公園には競馬場もあった。小1のとき、はじめて競馬を見た。その場面を絵に描いて、コンクールに出展したら、特等賞を得た。
やがて競馬場は北上川河畔に移り、規模も大きくなった。実家から歩けば30分の距離。早朝に散歩を兼ねて、何度も見に行った。
ただしギャンブルには全く興味がない。早朝をトレーニングする馬を見たくて。
それはそれは、美しい。長い首を伸ばし、鬣を靡かせ、尻尾を流すさま。
この世へ届けられた、神の贈り物とさえ思われる。
なぜ急に、馬のことを書き出したか。昨夜、宇多喜代子句集『記憶』に、
「山茶花に沿う馬の首うつくしき」
を見つけた。
そして今朝、前田夕暮『収穫』に、
「馬といふ獣は悲し闇深き巷の路にうなだれてゐぬ」
を見つけた。
夕暮の馬のほうは悲しい。けれどただの獣とはちがう存在感がある。「獣」というさえ失礼な気がしてくるではないか。
(2014年9月29日)