【往還集130】36 俳句は零戦(れいせん)である

靖国神社の敷地内に、戦時資料を展示する遊就館がある。そこに入ってまず出会うのが、戦闘機、零戦だ。正式名「零式艦上戦闘機」、略称「レイセン」または「ゼロセン」。展示されているのは「零戦五二型」で、爆撃や特攻の任務を担った。
これを入り口に展示する意図は、勇猛な戦機をまず見てもらうことにあるだろう。
だが「こんなちゃちな小型機で、若者たちを死へ追いやったのか」が、私の第一印象だ。 
このように受けとめ方は、まっぷたつに分かれる。
しかしともあれ、現物を、それそのものとして置くのは、大事なこと。館内には他にも魚雷やら弾丸やら、いっぱいの展示品があってなかなかの見応え。

「これは俳句と同じだ」

と閃く。
俳句の表現は、作り手の思想を削ぎ落とし、ことばをことばとして置く。どう解釈するかは、読み手にゆだねられる。
そこで私は直感する、「俳句は、遊就館展示の零戦と同じである」と。
(2014年8月18日)