【往還集130】22 「岡大短歌2」から・続

まず「連作八首」から、1人1首ずつ厳選してみる。

「文明がふくらみ風に人格を与えて回転扉が回る」(藤原愛美)
「こんなはずじゃなかったみたいな形して道路にかわく蛙の死骸」(安良田梨湖)
「傘を閉じるタイミングにも条例を ひとりぼっちの空間にいた」(上本彩加)
「もぎたてのあかいトマトは心臓の味がするからすぐに食べない」(三村美菜子)
「玄関のフローリングに寝ころべば違う速さで冷えていく耳」(山田成海)

1首目は、回転扉の回るさまを描く。「文明がふくらみ」は、いきなり観念的だといえなくもない。だが、この強引さにかえって引きつけられる。
2首目は蛙の死骸。「こんなはずじゃなかったみたいな形」に、なるほどと納得する。
3首目、傘を閉じるとき近くにいる人は危ないから、条例がほしいということか。下句と飛躍がありすぎるのでは。
スペースがなくなったので、今回の寸評はここまでにします。
(2014年7月10日)