1945年8月、自分は2歳7か月。戦争の記憶はないが、出征兵士を送ったことを憶えている。
寺の本堂に入るたびに、壁に掲げられている兵士の写真を見る。遺影は行くたびにふえていく。
戦争とは死ぬことだと知り、怖ろしかった。けれど天皇は負けても殺されない。
そのことがわかり、急に天皇になりたくなった。親にどのようにしたらなれるのかと尋ねる。するとなれるのは一人だけ、あとはだめなのだという。
がっかり。
日本は新しい憲法ができたからあとは戦争をしないのだと教わり、やっと安堵した。
中学になると「日本国憲法」の「前文」「第九条」を暗唱した。武器を持たない、戦争もしない、これなら天皇にならなくても、もう大丈夫だ。
だが時がたつにつれて、押し付け憲法だという声が起き、だんだん大きくなってきた。自国を守る軍隊なくして国家とはいえないという〈正論〉も、声高になってきた。
(2014年7月2日)