【往還集130】12 永井陽子

『短歌』5月号に「特別企画 新資料公開 永井陽子」がある。高校時代の未公開作品、俳句、短歌、小説を特集したのだ。
永井は繊細な歌を作りつづけ、本当の評価はこれからというときに自死してしまった。以来歳月を重ねるから、もう忘れ去られるばかりだと思っていた矢先の企画。うれしく、なつかしかった。

「雨あがりの木々の緑は永遠の陽の使者として我に降り来る」

永井の「永」と陽子の「陽」が読みこまれていると気づいた(偶然かも知れないが)。
永井陽子を最初に見た日のことが今でも鮮明だ。御前崎で「短歌人」の夏季集会があったとき。懇親会で自己紹介することになった。順番になり、ひょろりとした姿で立ちあがった女性が小声で、まだ高校生ですという。参加者のなかで、最年少だった。
場ちがいな所に立っているような危なっかしさが、以来眼裏に住みつづけ、自死を知ったときも同じ姿だった。
(2014年6月15日)