【往還集130】11 イノシシ

強い雨が3日つづいた。やっと晴れたので畑へ。
あれ、これはどうしたこと?!
一瞬、棒立ちに。
種イモを植え、葉が勢いづいてきたジャガイモの畝、そのことごとくが、乱雑をきわめている。咲きだした薄紫の花も、めちゃくちゃ。
イノシシにやられっちまった!
あちこちに足爪の痕跡もあるから、まちがいない。
この地区は山と畑の境に網を張っている。そのうえに春先にはシシ追いもしたから、安心していた。それでもダメだった。
わずかに残っている新ジャガを、みじめにも集める。バケツ一杯分。家に帰って茹であげたら、ホコホコして、それはそれはおいしかった。
この旬の味を、鼻で豪快に掘り起こし、豪勢に味わったというわけだ。しかも他の作物には見向きもせず、新ジャガだけというのが敵ながらあっぱれ。
満腹して山へ帰っていくイノシシファミリーを思い描き、悔しいには悔しいが、なぜか憎めないのだった。
(2014年6月14日)