【往還集130】7 ミシン

またまた、バッカなことをはじめたものだねえと、自分にあきれかえる。ただでさえこなしきれない仕事をかかえ、合間に耕作し、編み物までやっているというのに、今度は裁縫をしたくなってしまった。
これにはわけがある。子ども時代に住んでいた家は、母親の実家の敷地内にあった。実家には裁縫士の伯母がいる。その作業場に潜り込んでは「装苑」を絵本代わりに開き、ミシンもいたずら。当時は足踏みだから短い足で踏む。それでも小1のときにマスターしてしまった。小5になってこちらが引越してしまい、ミシンから離れてしまった。
けれどあの歓びは潜伏していたらしい。今になって服飾誌を毎月のように開き見る。鷲田清一の服装論で、この分野の奥深さにも目覚める。
けれど、見る、読むの〈机上の空論〉では何かが決定的に足りない。実際に作ってみなければ、感触がわからないという思いが募ってしまった。
(2014年6月8日)