【往還集129】38 「風の又三郎」

仙台文学館で宮沢賢治講座をやってきて、8回目を迎える。
今回取り上げるのは「風の又三郎」。賢治の代表作でもあるから、資料は山のようにある。かたわらに積んで次々と読むうちに、何だか賢治研究家の気分になってきた。本当は研究家でなく、一介の愛好家にすぎないのだけれど。
小学生のころから賢治の名は知っていた。なにしろ、郷土の作家といえば第1に啄木、第2に賢治だったのだから(今ではこの順位が逆転した)。
けれど作品として知るのは「風の又三郎」が最初だ。しかも本でなく、小6のときの映画教室(島耕二監督)による。
そのときの印象は今もって鮮明だ。一口でいえば、異様なまでに怖ろしかった。とくに野原に迷い込んで、いきなり魔性のものの出てくる場面が。
以来、くり返しくり返し、50回は読んできたというのに、畏怖感に慣れることはない。その畏怖の正体へ迫るのが、講座のテーマだ。  
(2014年4月18日)