【往還集129】35 賞

各分野の賞が次々と発表になる。それに一喜一憂するさまに若い日の自分は、ほとんど白けていた。
だが年齢を重ね、選考する立場に置かれることも増えてきた。そうなって、選考作業がいかに大変がわかった。
以来自分が受賞者に指名されるときは、無下に断れなくなってしまった。
これ、もしかしたらわが身のダラクかもと、まだ引っかかる。
私は数年間宮沢賢治賞・イーハトーブ賞の選考委員をつとめた。ある年、賞にふさわしいと自信を持てる人が候補にあがり、内定した。委員長である自分は当人への連絡係になったが「そういう華やかなことは自分に合いません」と鄭重かつきっぱりと断られた。こちらはがっくり。
しだいにこういう人こそがイーハトーブ賞に値するのだと思うようになった。
授賞式の壇上には宮沢賢治の大写真が掲げられる。「そういえば賢治さんは何の賞ももらっていない!」と今になって気づいた。
(2014年4月8日)