【往還集129】25 折角らいに罹ったのだから

震災直後からいつになく多作になったことは、『強霜』のあとがきにも書きました。
あのとき脳裏に浮かんだのは、原民喜「夏の花」の一句です。広島の原爆に遭遇した直後の

「このことを書きのこさねばならない」

の衝動。
時を同じくして浮かんだもう1句があります。

「折角らいに罹ったのだから」。

ただ、作者も題も忘れてしまったのでこれまで書かずにいました。
昨日、何の気なしに30数年まえの「読書ノート」を開いたら、記録しているのを見つけた。ライを病む詩人谺雄二の『ライは長い旅だから』の1篇「夢の雪の中で」です。少し読んでみます。

「ここまでくればらいもこれよし/生きて自ららい最後の光芒を放つはまたよし/ようやくにしてボクは/折角らいに罹ったのだからという思いに今夜立っていたのだ」

これにならって私も「せっかく千年に一回の大災害に遭ったのだから全身で見据えよう」と思いました。
(2014年3月20日)