あの日以来、なんと多くの「心から」を見聞きしたことだろう。
「心からお祈ります」
「心からお悔やみ申し上げます」
「心から復興を願います」
「心からーー」
「心からーー」
まるで心の垂れ流しで、ほとほとうんざりしてしまう。一昔まえは「衷心から」といった。いまさら「衷心から祈る」でもあるまいから、いつしか「心から」になった。
たしかにはじめのころは、本当の「心から」に思われた。
が、常套語化するにつれ、空疎きわまりない語になってしまった。しかも「心から」に実体が伴わなくなったから、いよいよに空疎である。
「福島の復興なくして、日本の復興はありえない」これなども、はなはだしく白けさせる。いっそのこと「福島の忘却なくして、日本の復興はありえない」と明言してもらったほうがこちらも納得する。
ことばの重みがどんどん失われていく時代。沈黙のほうが、どんなにありがたいことか。
(2014年3月18日)