【往還集129】20 リセット

沙羅みなみの作品を、もう少しあげてみる。

「明日なのか次の世なのか汚されるために生まれてきた白い紙」
「苦しくてことばを探す 見つかればくるしさはただ新しくなる」
「ここからは海が近くて追憶は時にするどく僕を裏切る」
「馬たちが弔いせんと歩みゆく闇のむこうにおそらくは、河」

短歌表現の歴史は、具体に拠ることが長くつづいてきた。自分もまたそうだから、いきなりのシュールを苦手としてきた。
ところが〈あの日〉に現実と超現実の落差が剥落し、全てがリセットされたと実感して以来、何もかもがスルーッと体内に入るようになった。
超難解句集の富澤赤黄男『默示』も、素手でわかるのが出てきた。
また、長い間現代詩を苦手としてきたはずなのに、先日など天沢退二郎の新刊詩集『アリス・アマテラス』が、全身に微風を受けるような感触で読めるようになっていた。
これはワタシのヒソカなるオドロキです。
(2014年3月7日)