井崎正敏は1947年生れ。吉本をよく読んできた人だ。近著に『〈戦争〉と〈国家〉の語りかた』(言視舎)がある。
その「序章」で、フクシマ後の吉本の発言をとりあげている。
「脱原発をいうことが即良心的であるとした多くの物書きのなかで、吉本の態度は際立っていた。そして吉本の科学技術に関する年来の主張は一般論としては正しい。少なくとも説得力をもつ。」
と認めたうえで、
「しかし原発がほとんど原理的なレヴェルで人間に統御不可能なシステムだという事実にあえて目をつぶり、つまり他のもろもろの科学技術と横並びにすることで、一般論に解消するという詭弁まがいの暴論を吉本は弄していた。」
と批判する。
私は井崎の論に共鳴する。放射能廃棄物は地中深くに埋蔵され、10万年後へ先送りされる。この間に科学が放射能をゼロにする方法を編み出したとして、はたして人類は生存しているのだろうか。
(2014年2月22日)