震災直後に「『反核異論』探さむものと入りたれど書は総崩れいかにかもせむ」と詠んだ。吉本隆明の著作。
学生時代以来吉本を畏敬してきたが、この本だけは納得できないできた。原発事故に大揺れのなか、どういう論拠で反核を唱えたのか再確認したくなった。総崩れのなかから探し出すことができなくて、アマゾンから取り寄せた。
科学の到達は後戻りできない、科学の欠陥は科学が解決するーーこの基本線が『反核異論』にはある。
今回の原発事故以後も、発言にぶれはない。
だが、はたして科学にはそれほどに万能の科学力があるのだろうか。もし仮にあるとして、直接被害を蒙った膨大な人々をどう考えるか。進歩のためには犠牲もありうる、運が悪かっただけだと思っているのなら、被災者をまえにきちんと表明してほしいと私は語ってきた。
原発肯定・推進論者が被災地で堂々と持論を説いた例を、私はまだ知らない。
(2014年2月22日)