【往還集129】13 不審死という最期

病死なら医師の死亡診断書でけりがつく。ところが病死でない死は、検死を受けなければならない。
小高賢も事務所に係官がやってきて、あちこち調べられたことだろう。
そんな寂しくつらいことを思っていた今日、「現代短歌」3月号が手元に届いた。彼の「よきもの」13首も載っている。掲載まではふつう2カ月かかるから、これももちろん生前作だ。
ところが一連の最後尾に置かれたのはつぎの1首。

「不審死という最期あり引き出しを改めらるる焉りはかなし」

だ。まるで自分最期の場面を、なぞっているようではないか。
こういう不思議な符合が時々ある。だから不吉な歌は作らないようにしようなどと、歌人同士で話したりする。
「よきもの」の前の頁には自分の13首も掲載されている。その最後尾を改めて見たら、
「山村(やまむら)に黒装束の人ら立つ法要へ行くバスを待たむと」ではないか。「噫」と胸の内で慨嘆するばかり。
(2014年2月14日)