「路上」の長期連載「宮柊二」は『山西省』論に入っている。『山西省』を解くためには、同時代の戦争歌集を読んでおかなければと、まず取り組んでいるのが『支那事変歌集 戦地篇』。1937年に刊行されたアンソロジーで、2704首収録の大冊だ。内容は当然出征体験である。
ところで私はこの読み込みと並行して、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)の「新鋭短歌シリーズ」を次々と開いている。新鋭だから20代30代が中心。戦争時代と現在ではあまりにも大きな開きがある。だのに戦争の語彙がないばかりで、時空が重なり合っていると感覚して、これまたわれながらあわてる。
五島諭『緑の祠』から。
「青空も災いもないのにああだれもラジオ体操をしているだけだ」
「新興住宅地が怖いその家とその家とのあいだの一泊が」
このふしぎな感覚は、いったいぜんたいどうしたこと?すぐにはことばにできないので、しばらくおあずけです。
(2014年1月4日)