文体には世代感覚がある。同時代の空気を吸う同士は、同じ言語感覚を無意識に身に付け共通の文体を手にしていくから、互いに共鳴し合える。
ところが世代の断層ができると了解困難になる。そういう事態がはじまったのは穂村弘あたりからだった。ましてやさらなる新人の作品は、ほとんど了解不能になる。自分も例外ではない。
ところがどうも気になる歌だなあとノートし、時間をおいて再読していると、なにかがじわりと伝わってくる。堂園の
「ベランダに冬のタオルは凍り付きあなたのきれいな感情を許す」
「祝祭の予感を胸に春の影重ねてさらに濃い影を呼ぶ」
「見上げると少し悲しい顔をして心の中で壊れたらくだ」
などがそうだ。生感覚の薄さ、そのあやうさを自覚しながら、どんな一歩も踏み出すことのできない在りよう。
これもまた新しく、大きな困難だ。歌の文体はその感覚に密着して生まれている。
(2013年11月28日)