【往還集128】45 箝口令・続

以下は叔父の話の概要。
〈満州の部隊に配属され、中国人を捕まえて来て収監する。かわいそうなので目を盗んでは煙草をやったりした。男たちは引き立てられて次々に消えていく。どこへ連れて行かれるのか現場を見ることはなかったが、生きたまま実験材料に使われているという噂だった。敗戦に傾いた頃証拠隠滅の命令が下され、書類をどんどん焼却。敗戦避けがたしの報は一般人には秘匿され、まず軍属の家族が帰国した。つづいて自分らが一般人に先駆けて乗船〉。 
叔父の配属されたのは731部隊、正式名を関東軍防疫給水部という。初代部隊長が石井四郎であるところから石井部隊とも通称される。
徹底した証拠隠滅にもかかわらず、やがて多くの証言は出てきた。
そういう日が到来するまで、厳しい口止めは本人だけでなく家族・一族全員に重圧を加えてきた。
国家権力の強要する秘匿には、いつでも暗部が付随する。
(2013年12月7日)