陣崎は1977年生まれ。絵本や小説もやっている。したがって短歌に身をしばりつけているのとは違う自由さ柔軟さがある。
もっとも短歌は伝統詩と定型詩の要素を負っているから、いつかは伝統詩であることにぶつからざるをえない。
その困難さにまだ対面していない柔軟さが、この歌集の魅力でもある。
「どうやって生きてゆこうか八月のソフトクリームの垂れざまを見る」
「人殴ったことだってある手のひらをジェットコースターにむけてふってる」
「ええとても疲れるしとてもさびしいでもクレヨンの黄はきれいだとおもってる」
「人類の滅んだ世界に王として生きてはあふれゆく植物よ」
これらに感じられるのは、対決の対象すらはっきりしないまま、生の世界へ、そして宇宙へと投げ出された生き難さだ。当然ながら自分を定位する場所も見つからない。
そういう透明な不在感が、陣崎の歌のはじまりとなっている。
(2013年11月28日)