【往還集128】31 大梅寺

境内の紅葉。
いっぱい並ぶ羅漢像。

家のめぐりは蕃山(ばんざん)の山並が連なる。山といっても357メートルしかないが、一歩踏み入れるとなかなかの急坂であり、森林も深い。カモシカもキツネもクマも棲息している。
その山中にあるのが大梅寺(たいばいじ)だ。瑞巌寺を退出した雲居国師が終焉の地として築いた名刹だ。
荒々しい踏み石を登って行く。大杉と大竹の林に囲まれ、昼ながら薄暗い。羅漢の石像が、苔を被りながら並ぶ。本堂前には、竜安寺さながら庭園もある。折からの紅葉が、周辺に明りを添える。
と、ここまで書けば、名刹ならさぞかし参拝者も多いのではと思うだろう。
ところが人はほんのまばら。
それというのも正門はたいてい閉ざされ、駐車場も用意していない。しかも「観光寺ではありません。立入ご遠慮ください」と本堂前の扉にある。
この徹底したそっけなさ。それがよくて自分は、折々通用口から登り、四季の風情を全身に浴びては帰って来る。
(2013年11月6日)