晩秋の肌触りのしはじめた今日、久しぶりの荒浜へ。
海岸すぐ近くには、新しい防潮堤がまるで万里の長城のように伸びている。傷跡なお深い松林もどんどん掘り起こされ、整地されている。
住民がどこに、どのように移住するかもすっかり決まっていないのに、時間は容赦ない。進められるところから、工事は行われ、外堀は埋められていく。
道路沿いの敷地に家財を積み上げ、椅子にデンと座りつづける初老の人がいた。「こご此処はおれの土地だ、絶対売らない」と息巻いている。
荒れ果てた松林を歩いていて、一枚の毛布が枝に引っかかっているのを見つけた。白地に赤い花、そして緑の葉の模様。3年たつというのに、色の鮮やかなこと。
変りゆくもの、変わるまいとして必死のもの。
そして祈るほか、どうしようもない自分。テトラポッドに体当たりた波が砕け、のし上がり、渚へ寄せて、そのまま平らぐ。晩秋の海だ。
(2013年10月21日)