【往還集128】18 『かたすみさがし』から

田中ましろ歌集『かたすみさがし』(書肆侃侃房)から。

「人間は自由過ぎても困るから青空に軟禁されている」
「神さまも発見されてしまったしもう絶対と呼ぶものがない」
「石ころに引かれて進むこどもたちと思ったらなんだ蹴っていたのか」
「いなくなるために準備をするように背伸びしながら窓を拭く人」
「3階の窓から空に向け飛ばす輪ゴム 神さま僕はここだよ」

抽出したい歌はまだまだあるが、とりあえずここまで。この田中の世界を表現するうまいことばが見つからない。短歌の大方は人事の具象から出発する。それがこの詩型の欠陥ともなるが、田中は具象というよりも、いきなり宇宙とか神のまえに自分を置く。そのいきなり度は、幼児性にも通じる。というか宇宙性と幼児性は、紙一重のところがある。
「青空に軟禁されている」自分も幼い日に、同じ思いで草に仰向けになっていたことがある。その記憶が甦ってきた。
(2013年10月11日)