【往還集128】17 「 」

「短歌研究」10月号は第31回「現代短歌評論賞」の発表。受賞には到らなかったが、鈴木恵子「短歌は何をめざすか」の冒頭に目が引き寄せられた。
いきなり「●」を例示し「右記の黒丸は、短歌である。と、考える人は何人いるだろう。では、俳句と思う人は?正解は詩である。」とある。
この出だし、衝撃的と思ったら、正解の根拠に草野心平「冬眠」が。この種明かしにはがっくりだが、「冬眠」がなくても「●」は短歌でも俳句でもなく、やっぱり詩だ。
それならば「 」はなんだろうか。「 」とはつまり、なにもない空白状態。
この場合は歌でなく詩でもなく、俳句だ。「零は可能か」(『横書きの現代短歌』)にすでに述べたことだが、100メートル競走は限りなくゼロをめざす。これに相当するのは俳句。「うごけば、寒い」
は「寒い」になりついには「 」になる。
ただし問題は、「 」になったとき、なお人に伝わるかどうかだ。  
(2013年10月10日)