【往還集128】3 海へ向かう

月に一度、耳鳴りの治療に通っている。耳鼻科の近くに「SSサーティ」という高層ビルがある。30階は大展望台だ。
通院ついでに上ってみたら、絶好の快晴、市街地の果ての太平洋まで一望できる。
大震災後、何度かここに立ち、海の町並がごそっと剥落したさまに、心を痛めた。
今日もおのずと祈りの気持ちが湧く。
あれから2年半になるが、かなしいことはこれから顕在化していくと思う。
昨日は石巻の日和幼稚園の地裁判決が出た。丘の園から子どもたちを送迎しようと海側へ下り、津波に巻き込まれて4人が死去。訴訟は遺族側の勝訴となった。
だのに「よかった」という喜びが湧かないのは、園の誰もが被災者で、情報も十分に届かず、パニック状態だったからだ。
それでも法廷の場は、どちらかに白黒を付けなければならない。勝っても負けてもやりきれない訴訟が、これからも出る。目下、係争中のもある。
(2013年9月18日)