【往還集128】2 無数の星

台風は荒れに荒れて、各地に大きな被害をもたらし、やっと日本列島を抜けた。
静寂の戻った早暁。まず脳を冷やさんとベランダに立つ。
そのときだ、脳よりさきに目がカキーンと見開いたのは。
無数の星が、金砂となって、いっぱいいっぱいに散らばる。すぐ頭上には三つ星が。
このような星空を見たのは、3・11の夜以来のこと。あのときは灯り全てが消えたから、それこそ縄文の空そのものとなった。
金砂の間をくぐるようにして、一粒の光が東南方向へ流れていく。なんという名の衛星なのだろう。
星空を仰ぐたびに、宇宙の巨大さには圧倒されてしまう。到底、ことばは追いつかない。ボイジャーが36年かけて太陽系を脱出したのは、5日まえのこと。人類の知はかくも大きく、留まることをしらない。
だのに、地上に生じていることは、あいもかわらず貧し過ぎる。という弁もなんだか陳腐な感じがしてくる。
(2013年9月17日)