【往還集127】46 シャガール展にて

宮城県美術館で開催中のシャガール展へ。シャガールといえば、空中を浮遊する恋人と花のイメージ。色彩も華やかなドリームの世界だ。
ただしシャガールはユダヤ人、作風も退廃的だとされてナチス政権下では処分の憂き目にあった。
展示は「オペラ座の下絵」からはじまる。下絵のどれもが、自由自在な幼児画に近似するが、ここを押し通すところがえらい。
絵画展に行くたびに私は羨望を覚える。既成の型にとらわれない自在さが展開されている!「自分だってこれからは自在にやっていこう」と、蘇生した気持ちになって帰る。
だのに帰ったとたん、短歌の定型が厳然として待ち構えている。短歌で自由になるとは、定型を破壊することでなく、不自由を受け入れ、定型を極めた末に可能になるといわれてきた。「確かに、その通りで」と力なくつぶやきながらも、華麗に浮遊する恋人像がしきりに目のまえを去来するのだ。
(2013年9月13日)