【往還集127】32 ガレキイラスト

海のガレキをもとに描いたイラスト。

被災後の海辺を何度も歩きカメラに収めた。一瞬にして覆った家屋や自動車、飴細工となって湾曲した鉄柵、なにもかもが超現実の世界だ。
カメラを向けるのは、生き残ったものの傲慢だという後ろめたさはある。
けれど、写真をもとにイラスト化したなら、鎮魂にもつながるのではないか。
そんな気がして鉛筆画をはじめた。なにしろ、どれもこれもが類ないオブジェだ。
だのに、「何かが違う」という感覚が募っていく。
ついに鬱気味になって止めてしまった。
なにが理由なのだろう。
今朝「河北新報」文化欄の「未来へ続く風景を撮る」を読む。塩竈出身の写真家平間至氏についての記事。彼は震災の10日後に故郷を訪れるが、壮絶な光景を目のまえにしながら、シャッターは押さなかったという。「自分が撮ろうとしてきた美意識とは違う」がそのときの思いだ。
私は、平間氏の気持ちが痛いほどわかる気がした。
(2013年8月20日)