思いついて紙片の書いた、ほんのメモです。
「棄民とは民を棄てることでなく、棄てられた民のこと。同じことのようなれど。」
「森のまえで、雨に会った。雨は糸となって降る。どうして棒とか塊でなく、糸となるのだろうか。」
「腕をかくし、顔もすっぽりとかくす人がふえてきた。〈ひと〉をかくすには、あとどんな方法があるだろうか。」
「梅雨明けを待ちきれずに、サマーニットの手編みをはじめた。編み物をしていると、いつでも、自分が自分にもどっていく。」
「霧雨のなか、子どもたちがラジオ体操をしている。頭上のネムの花も一緒にはじめた。」
「コンクリートのすきまに草が芽をだし、丈をのばしていく。この芸当はいつもみごと。」
「神は天地創造をした。人間が知る以前にすでにいた。知られるまでの、なんとなんと長い孤独。」
(2013年7月27日)
【往還集127】21 またしても、ほんのメモ
「あまり親しくない人に書庫を見せて欲しいといわれたことがある。書庫は魂の秘密基地ゆえお断りした。テレビの番組で、家で仕事をしているシーンを入れたいといわれたことがある。家は魂の秘密基地ゆえ、お断りした。」
「セックスレス夫婦が老いて仲良くなったという記事を読んだ。なんだか、いい話だ。」
「寝たきりのぼけ老人が女性介護士に手を伸ばすうちに、腕の機能が回復したという。この実話、おかしくって、おもしろくって。」
「「いいね」の軽っぽさが、いつも気になる。「いい」「だめ」だけで割り切れるわけがない。」
「舞台を観にゆくと下駄ばきの登場する場面がある。ガタガタというあの生の音。板は全身で痛い、痛いと悲鳴をあげている。」
「〈拾ったネコです、大切にしてくださる方にさしあげます〉と、錦が丘祭のテントのまえに。ネコはあくまで静かに、カゴのなかに鎮座していた。」
(2013年7月28日)