鉛筆削り器がない時代、折り込み式の小刀「肥後守(ひごのかみ)」で削った。まず小刀を滑らかに研ぎ澄まし、鉛筆の尖端を斜めに削っていく。最後に芯を尖らせて完成。
それだけのことながら、苦手な人がいっぱいいて、見るからに不格好な削り具合になる。休み時間になると、「オレのも削ってけろ」と、机の上には10本も並ぶ。それらをつぎつぎに尖らせるのは、小学児童私の歓びだった。
時代とともに鉛筆削り器が一般化して、一気に仕上げてくれるが、あまりにも端正な尖り具合は無味この上もない。特に色鉛筆の場合は、せっかくの芯を台無しにする。さらにその後、シャーペンやボールペンに主流は移ってしまったが、私はいまでも鉛筆派だ。しかも、これ以上ダメというところまで使いきらないと、鉛筆がかわいそうでならない。そのぎりぎりをコップにためているうちに、いっぱいになった。
これ、私のひそかな宝物です。
(2013年6月30日)