【往還集127】11 取材・続

『遺体』は釜石の遺体安置所を舞台にしたルポ。震災の起きてほどない3月中旬に被災地へ入り、現地の多数を取材する。
石井もまた現地と自分の折り合いを完全につけているとは思えない。だがどこかでそのことに耐え、乗り越えようとしている。これがプロというものなのだ。
私はこの本を一気に読むのが辛くて少しずつ開き、そのたびに涙を拭い、数日かかって読み終えた。
特に心に残るのは、次々と安置所に運ばれてくる「死体」が、「遺体」へと変わっていくさま。石井はその機微を、民生委員千葉淳を追いつつ描きとっている。
巻末の「取材を終えて」から引用しておきたい。

「震災後間もなく、メディアは示し合わせたかのように一斉に「復興」の狼煙を上げはじめた。だが、現地にいる身としては、被災地にいる人々がこの数えきれないほどの死を認め、血肉化する覚悟を決めない限りそれはありえないと思っていた。」
(2013年6月13日)