蔵王山麓のえぼしスキー場の春は、すいせん祭で有名だ。
花の祭はいまやあちこちにあって珍しいことではないが、それでもやはり壮大な花園をまえにすると一瞬にして魂が吹き飛ぶ。
近年で特に印象的なのは、気仙沼の徳千丈山のツツジ祭。そのときは祭を知らずにたまたま見たのだが、全山真赤の迫力には文字通り魂消て(たまげて)しまった。
すいせん祭のほうはいつか行ってみたいと目論んでいた。が、満開に早すぎたり、悪天候だったりして叶わなかった。今回こそはと勢い込んで宿をとった。
だのにまたしても、あいにくの雨。オレはすいせんに縁がないなあと諦めていた翌朝、奇跡的な大快晴。
さっそく車を走らせる。すると寒い春のために10日も遅れながら、満開の頂点だった。数知れぬ花がスキー場を埋め尽くし、巨大な黄金の絨毯が天まで広がる。「あ!」と一声漏らすのみで、肝心の歌はひとつも浮かんでこなかった。
(2013年5月17日)