【往還集127】1 荒浜へ

「東日本大震災犠牲者」碑
「東日本大震災廃校になる荒浜小学校に掲げられた横断幕。

海沿いにはおびただしい松の倒木が残っている。
その近くに「東日本大震災慰霊之像」と、犠牲者名を刻んだ石碑が建った。総数189名。同じ姓で、57才、33才、4才、2才が並ぶ。
碑の最後は「荒井交番 渡邉武彦 58才」。避難誘導を最後までして、帰らぬ人となった巡査だ。
刻まれた文字は静かだが、ひとつひとつには掛け替えのないドラマがある。
荒浜小学校の体育館は、すっかり解体された。校舎も間もなく消えてしまう。「ありがとう!夢 希望 未来」の横断幕が3階のベランダに。自分も最後の校舎に入って、1階から4階まで巡る。散乱した物品は片づけられ、廊下もきれいに清掃されている。玄関の天井の破れ目は、雀の家になっていたらしい、数十羽が一斉に飛び出した。
人の心は置いてけぼりにされ、事態だけは「未来」へ向かってどんどん進んでいく。もう3年目。まだ3年目の気もする。
(2013年5月1日)