若冲(じゃくちゅう)がこんなに人気があるとは知らなかった。仙台博物館で若冲展をやっている。車で出かける。
と、長蛇の列ではないか。
諦めて近くの東北大学植物園へ。ついでにこの一帯の川内も巡る。
川内こそはわが青春の出発点。60年安保終焉の翌年のことだから、学内は文字通りガクガクしていた。それをも含めて、忘れがたい出発点だ。
最初の下宿先も川内の裏手で、地名は山屋敷。谷川沿いの坂を登り切ったところにある、見るからに安普請の二階建。わずか三畳間の狭さで、机と布団だけでいっぱいになった。
あれから52年。いくらなんでも、とうに消え去っているだろう。
深く切り込んだ谷川に沿って、坂を昇る。昇り切る。
すると、あるではないか、かの日と同じ二階建が。玄関も、壁の色も、窓枠もそのまま。ただし入口は閉鎖され、廃墟と化していた。
もう戻らない時間が、目のまえに。
これは一人だけの感傷です。
(2013年4月24日)