【往還集126】31 桜満開と大雪

満開の桜が雪で被われ、やっととけはじめたところ。

ソメイヨシノが徐々に北上しはじめ、やっと仙台にもやってきた。
ところが郊外の山手にある団地一帯は、例年になく花が少ない。蕾のうちに山の鳥に啄まれたという説、いや今から萌芽しようとして連日の寒冷にやられたという説。どうやら後者が真相らしい。
それでもなんとか季節を迎え、満開になった。
ところがである、昨日から降りはじめた雪が朝になってもやまず、とうとう膝丈を越えた。66年ぶりの春の大雪だという。せっかくの花も、すっかり面目を失った。
もっとも、花に雪とは、めったにない風情ある景。重みに撓む枝の下に立って、仰ぎ見ることにした。
すると、白に被われながらも、ほんのりと紅色がのぞいている。その嗜虐的な美に、思わず胸がキュンとなる。キュンとは古めかしいが、やはりキュンだ。
自分が句の作り手ならば一句ぐらいはものするところ、短歌ではめろめろになるからいけない。
(2013年4月21日)