今回は高校生の歌がいっぱい寄せられた。3・11のとき、彼らは中学生。卒業式や受験を控えていた。衝撃はあまりに大きく深く、ことばが出てこなかった。2年たって、やっと生まれるようになった。
いくつかの作品を紹介したい。
「家の壁あの日の傷に染みついた潮のにおいが悲しく残る」(岩佐風美香<ふみか>)
「触れること許されぬままお別れを祖母に届かぬ右手が寂しい」(日野はるか)
「あたりまえにありがとうを言いたくて一月(ひとつき)ぶりの灯りはまぶしい」(佐藤紀子)
「失ったものもあるけど「しっかり」と頬をはじいた鋭いみぞれ」(久保田有菜<ゆうな>)
「雪が降る十四歳の私にも全てを白に戻してほしい」(荒舘香純<あらたちかすみ>)
福島からも送られてきた。その1首を。
「除染され再び訪(おとな)ふ日のあらむ亡母(はは)と愛でたき夜の森の桜」(齋藤せつ子)
富岡の桜の名所、夜の森公園。原発に追われていまは伊達市で避難生活をしておられるという。
(2013年2月12日)